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2018.9.25

トーク&ディスカッション
「『避難者』を孤立させず、ともに支える道を求めて」9.15学習会報告


2018年9月15日、当NPO主催で「『避難者』を孤立させず、ともに支える道を求めて〜原発事故避難者+瀬戸大作と一緒に考える」トーク&ディスカッションを東京・本郷フォーラムで開催しました。

 東京電力福島原発の爆発事故の後、住み慣れた街を離れ、見知らぬ土地での生活を余儀なくされた原発避難者たちの現状を知るとともに、今後の課題を話し合いました。

 パネラーは「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作さんと代表の松本徳子さん。松本さんは、3.11当時、福島原発から60㎞の郡山市で生活していました。避難指示こそなかったものの、福島県の中通り一帯が放射能に汚染され、ホットスポットがいくつもあることを知り、また当時12歳の娘さんが鼻血を出したこともあって、住宅支援があった神奈川県に避難しました。松本さんのように、県内から被ばくを恐れて全国へ避難をした人々は少なくありません。家族が散り散りになるケースもまれではありませんでした。


「災害救助法」適用の限界と、「子ども被災者支援法」無視

 各自治体の避難者対応は「災害救助法」に則り、「避難所・応急仮設住宅の設置」は各自治体が個別に対応することになりましたが、そもそもそれが問題だと瀬戸氏は指摘します。「原発事故は単なる自然災害ではなく、その支援策は、『災害救助法』とは異なる原発事故に特化した救助法を法的に整備し、それによってなされるべきだった」のです。

「災害救助法」での対応であったため、松本さんのように指示区域外の避難者に対しては、住宅支援は2017年3月で終了することが2015年5月に閣議決定され、国と県は2020年までに県外避難者ゼロを目標に掲げました。また、同年8月には、「子ども被災者支援法」の基本方針が閣議決定で改定され、福島県も自主避難者への無償住宅提供の打ち切り方針を追認しました。

「子ども被災者支援法」は2012年6月に議員提案により党派を超え、全会一致で国会で決められた法律です。しかし、その後の避難者対応については、国会で議論することもなく、すべては閣議決定で進められました。そして、現在は福島県が方針を決定し、国はそれを追認するだけになっています。「子ども被災者支援法」という法的根拠があるにもかかわらず、その運用は現政権の都合の良い方に、恣意的に行われている。なんでもかんでも閣議決定で進めてしまおうとする安倍政権の体質がここにも現れています。そのことに国会議員はもちろんのこと、全国民が気づいて欲しいものです。


7割が「県外避難を継続」。住宅補助打ち切りで「貧困」に直面する避難者たち

 2016年6月の段階で、福島県内への避難者は49,333人、県外への避難者は41,532人にのぼります(*1)。しかし、これ以降、県は避難者の実態を調査していません。調査をしないということは、実態がわからず、従って対策が立てられないということです。調査をしないことによって、避難者がまだ存在するという事実を隠蔽し、問題が風化していくことを狙っているのでしょうか。

 一方、避難先の自治体では避難者数を明らかにしているところもありますが、避難者が避難指示区域から避難してきたのか、区域外から避難してきたのかを分けずに調査したものであり、それぞれの支援内容が違うため対策が立てにくくなっています。

 事故から7年が過ぎ、避難指示区域外からの避難者のなかでは、仮設住宅後の住まいとして引き続き東京に在住することを希望する人は67%、福島県に戻ることを決めた人は26%、その他の府県に転居する人は7%などとなっています。

 避難者の住宅支援が打ち切られている今、避難者が直面しているのは「貧困」問題です(*2)。調査によれば、東京都に生活している避難者の世帯月収は5万円未満8.7%、5~10万円未満13.4%、10~20万円未満が30.2%となっており、20万円以下の世帯が過半数を占めています。避難により、毎月の収入は8.2万円減少し、支出は0.9万円増加しています(*3)

 このように、2017年3月末の住宅無償提供打ち切り後、引き続き県外避難を継続している世帯は約7割以上であり、ほとんどの人が生活資金の枯渇だけでなく、相談する人がいない、健康に不安があるなど、たくさんの課題を抱えながら生活をしています。心身共に追い詰められて、精神的な病を発症する人もいます。


海外政府も「人権」の観点から問題視。支援終了まで半年で、状況は逼迫

 今、国や福島県は「原発事故から7年が経過したのだから、避難者は自立するべきだ」という方向に動き出しています。避難者の実態を調査せず、その声を聴かず、次々に支援や補助金を打ち切りすることで、避難者を生活困窮やひいては自死にまで追い詰めようとしている。まさに現代の棄民政策と言わざるをえません。

 昨年10月の国連人権理事会では、オーストラリア政府から「福島の高放射線地域からの自主避難者に対して、住宅、金銭、その他の生活援助や被災者、特に事故当時子どもだった人への定期的な健康モニタリングなどの支援提供を継続すること」、ポルトガル政府からは「避難者の帰還に関しての意思決定に男女平等な参加を確保すること」などの勧告がありましたが、日本政府は改めようとしません。

 2019年3月末には「民間賃貸住宅等の家賃補助(民賃補助)終了」「国家公務員住宅居住期限終了」などが予定されています。避難者は何故に誰の責任で避難したのか、誰の責任で貧困になったのか。憲法に定められた平和的生存権の基本である「居住権」すら保障されていない実態がここにはあるのです。支援終了まで6ヶ月になり、状況は切迫しています。
「原発事故の加害者が被害者に自立を促すこと自体が問題であり、国のあらゆる問題の犠牲になっているのが原発避難者である」と、松本さんは指摘しています。

 福島原発事故から7年半経ち、避難者たちの姿が見えにくくなっています。「原発避難」と「貧困」が混在した今、同時並行で対策を講じること、福島県の人たちと共通の言葉を持つこと、人権・人道の問題として考えること。そして、あきらめないで広く社会に訴えていくことなどを、学習会では確認しました。


出典 *1:福島県発表 *2:東京都「平成29年3月末に応急仮設住宅の供与が終了となった福島県からの避難者に対するアンケート調査結果」より岩渕友事務所作成 *3:同上

0915学習会

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