特定非営利活動法人「ふくしま支援・人と文化ネットワーク」





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中村敦夫『線量計が鳴る』東京・王子公演 老優の怒りに襟を正す (2019.02.08更新)


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2018.6.27

5/20新作能「鎮魂」公演報告
~白河文化交流館コミネス大ホール~

安竜昌弘氏
物語は、息子を3/11の津波でなくした日本人の父親が、アウシュヴィッツで、そこで亡くなった囚人の亡霊と出会い、それぞれの経験や思いを語り合うというものであり、戦争、自然災害と原因は異なるもののそれぞれの被害者個人にもたらす悲惨さを改めて感じさせるものでした。今回は、白河市にあるアウシュヴィッツ平和博物館の開館15周年記念ということで開催されたものです。同館の館長とお仲間の方々に敬意を表します。

アウシュヴィッツ・ヴィルケナウ博物館の副館長も来られていましたが、こちらは国立でしっかり惨事を記憶に残して行こうという意思が感じられます。日本の方は、特に、開催地福島では津波被害と放射能汚染について、土地の再造成や汚染土壌の除去は進んだものの、自主避難者の住宅、子どもの健康被害等の問題等が残ったまま、忘れ去られる、忘れようとしているところがあり、こうして、ご当地で上演されたのは意義深いと思います。私を含め東京からの参加者も多く、遠くは芦屋からも来られていたのは、関心の拡がりを感じさせるものでした。能そのものは、天皇陛下ご夫妻も臨席された東京の国立能楽堂での上演(2016年)以来の舞台、よりメリハリの効いたものになっていたような気がします。能そのものが鎮魂のためのものとか、声をお腹の底から絞り出す表現が、参加者それぞれの心に滲みる舞台でした。

アウシュヴィッツ平和博物館
昨年アウシュヴィッツを訪ねた時にワルシャワで会って以来の、前駐日ポーランド大使でこの能の創作者の旧友ヤドヴィガ・ロドヴィッツ女史とも短時間ですがお話できたのは嬉しいことでした。能の感想については当然ですが、福島やその他の被災地の復興状況について、強い関心を示されていました。未来に向かって強く生きることが基本ですが、そのためにも、過去を「水に流す」のでなく、しっかりと記憶することの重要性を改めて強調したいと思います。次の公演は大震災10周年でしょうか、国際無形文化財として継承されていくことを期待します。

理事:小林 一