特定非営利活動法人「ふくしま支援・人と文化ネットワーク」





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2014.5.29

年次総会付帯イベントを開催。樋口健二、小渕真理さんらの話を聞く

 NPO「ふくしま支援・人と文化ネットワーク」は5月25日、2014年度年次総会付帯イベントとして、東京・市ケ谷のJICA地球ひろば・国際会議場において、長年、原発労働者の写真を撮り続けながら社会に問題提起をしている樋口健二さんの講演会「原発労働者からフクシマを視る」を開催しました。

原発労働者を「公務員待遇」として労働環境の改善を急げ

被曝労働者の写真を前に講演する樋口健二さん

 樋口さんの77歳とは思えないパワーは、40年間に及ぶ国家権力への異議申し立てから出るもの。納得のいかないことや不合理なことに対して、徹底的に闘う姿勢は樋口さんの原点と言えるものです。
 原発で働いて被曝した労働者の写真をスライドで紹介しながら、話は被曝労働の実態だけでなく、大企業に牛耳られている日本社会の構造や労働形態にまで至りました。
 今後、原発で懸念されるのは若年労働者や外国人労働者の問題です。過去にも18歳未満と知りながら少年たちを原発で働かせていた事実があります。外国人労働者の就労も、樋口さんの告発をきっかけに国会で問題視され、表向きは中止になった経緯があります。

会場には樋口さんの写真をパネルで展示

 樋口さんは原発被曝労働の根底には元請け─下請け─孫請け、正社員─非正規社員などの差別の構造があると指摘、今後原発労働者の被曝を防ぎ、ピンハネの横行など労働環境を改善するには「彼らを公務員待遇にすることが不可欠だ」と提言しました。会場では樋口さんがこれまで撮りためた写真のパネル展示や、写真集などの販売も行われました。


「福島県環境創造センター」建設の問題点を指摘

原発災害情報センター 小渕真理さん

 引き続いて、福島県白河市の「アウシュヴィッツ平和博物館」館長であり「原発災害情報センター」にも関わる小渕真理さん、当NPO理事長の神田香織を交えて、パネルディスカッションを開催しました。
 小渕さんからは、「美味しんぼ」騒動は、福島の人たちを二分化させ、被災者が声が挙げにくくなってしまったこと、未来が見えないために疲れている人が多くなったことなど、福島の現状報告がありました。
 また、三春町で建設が進む「福島県環境創造センター(仮称)」についての問題提起もありました。この施設は「放射性物質により汚染された環境を早急に回復し、県民が将来にわたって安心して暮らせる環境を創造する」として、国が194億円の整備運営費を拠出し、三春町に本館、南相馬市に分館を建設するもの。
  しかし、同センターの運営には、日本原子力研究開発機構(JAEA)や国際原子力機関(IAEA)など原発推進組織が深く関与しています。三春町に建設予定のA施設「交流棟」は小中学生を対象とする放射線教育の場として活用され、県内の小学生5〜6年生の来館を義務づけるという構想もあります。
  小渕さんらはこの計画に対して、交流棟での展示・教育内容については、政府や産業界から独立した策定委員会でオープンな議論をすべきであり、また原発の「安全神話」の反省に立ち、原発や放射能の危険性を直視した内容にすべきであると考え、県議会に請願を行うと共に、県の担当者と改善に向けた話し合いを続けています。 (詳細は 「フクシマ・アクション・プロジェクト」のWebサイトを参照http://npfree.jp/fukushima.html)

パネルディスカッションでの樋口さんと小渕さん

 重大な原発事故を起こしながら、誰も責任を負うこともなく、国は福島を囲いこんで原発事故をないものとしようとしています。怒る樋口さん、静かに語る小渕さん、対照的なゲストスピーカーの対話は、私たちに福島との関わりについてあらためて考えるきっかけとなりました。来場者からの活動報告やパネラーとの質疑応答も盛んに行われ、終了後は樋口さん、小渕さんを囲んでの懇親会も開かれました。

(写真撮影:三島タカユキ)