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2013.10.25

車座朗読会、原発事故の本質をえぐる言葉の力を感じさせて

 10月12日、文京区の本郷文化フォーラムで、当会主催の「福島を忘れない!第一回車座朗読会」が開かれました。
 第一部は、南相馬市の詩人・若松丈太郎さんの「福島原発難民」「福島核災棄民」などの詩作品を中心に構成された、語り・朗読・歌によるパフォーマンス。これまで「憲法寄席」などで活動していた演劇人や歌い手が台本を書き、演じました。
 第二部では詩人のアーサー・ビナードさんを迎え、「3.11後の東京から見えないもの」と題したお話をいただきました。 「3.11」後、原発推進側が繰り出す無数の言説は、「原子力帝国」ともいうべき、これまでの社会体制を無批判に信奉し、原発安全神話を再構築しようとするものです。マスメディアを動員したその言葉の洪水に翻弄され、私たちはともすると事故の本質を忘れ、見失ってしまいがちです。しかし、言葉に対しては言葉を。事故前から一貫して原発に反対してきた、若松丈太郎やアーサー・ビナードさんの言葉は、人間の生活にとって何が大切で、何が不要なものであるかを、あらためて突きつけます。
 50人も入れば満席になる小さな会場でしたが、それだけに演じる人と見る人の熱い一体感が感じられました。車座朗読会は、朗読する側・聴く側を隔てることなく、ときには観衆が舞台に立ち、自分の思いの丈を詩や歌や叫びに乗せて発表する、そういう交歓の場となることを狙っています。次回の開催は来春を予定しています。今度は気軽に演じ手としてご参加いただけるよう、あらためてみなさまをお誘いします。

▶第一部「構成舞台 福島核災棄民」の様子が、YouTubeでご覧いただけます。
 第二部アーサー・ビナード氏講演の動画も準備中です。


 会員で、詩人でもある青山かつ子さんから、朗読会に参加しての感想が届きました。

「福島を忘れない!車座朗読会」に参加して

会員・青山かつ子

 十月十二日、本郷文化フォーラムで「車座朗読会」が開かれた。第一部は南相馬市在住の詩人・若松丈太郎さんの著書『福島核災棄民』を中心にした、朗読、歌、語りの構成舞台である。
 会場が暗くなると同時に福島の民謡「新相馬節」が流れてきた。哀調おびた節まわしが、観客を一気に異空間へ引き込んでいく。
 若松丈太郎さんの詩は一作一作が具体的で切迫感があり、原発事故後の福島の惨状が、鍛えられた朗読者の声を通して浮き彫りにされていく。活字を追うだけでは得られない臨場感。まさに言葉の力、声の力である。朗読された詩の中には原発誘致を痛烈に批判した方言詩もあった。ズーズー弁で語られると、どこか滑稽で、どこか哀しい。
 畑中暁来雄さんの作品「原発伏せ字議事録」は、まるで掛け合い漫才のようである。伏字の部分を×××と読むと、すかさず相方が×××の部分を埋めていく。朗読ならではの面白さがあった。
 張扇を叩きながら進行役の語りは、歯切れよく絶妙な間合いで、次の場面へ聴衆を導いていく。ギターの演奏と歌では、会場と出演者が一体になって盛り上がり、熱気あふれる舞台だった。
 第二部はアーサー・ビナードさんの講演「3・11後、東京から見えないもの」だった。
 とりわけ印象に残ったのは、「汚染水」についてである。原発事故で高濃度の放射能の入った水を単に「汚染水」として報道され、語られていることに、私は日ごろから腹立たしさを感じていた。あまりにも軽すぎるネーミングだからだ。その「汚染水」がひとり歩きして、今は世間に抵抗なく受け入れられている。その理由がビナードさんのわかりやすい説明によって、すとんと腑に落ちた。
 たとえば「竜神水」「深層水」といったような「~水」は広告が土台になっているという。消費者は知らず知らずのうちにこの「~水」に騙されしまっている。「汚染水」は水というメソッドがあって使われていて、いわば、「汚染水」は問題の本質を隠すためのネーミングだと語る。海外の新聞記事では「汚染水」のことを〝radioactive saggy mess〟(放射能でめちゃくちゃになった状態)と表現しているという。
 本会のチラシに「汚染水」は「猛毒水」と読み替えるべきだとあったが、同感である。
 また、「苔」についても日本語に造詣の深いビナードさんならではの切り口で、国歌の歌詞の苔と(苔のむすまで)、植物の中でも放射能を吸収しやすい苔を重ね合わせて、ユニークな視点で論じている。
 「安倍さんに問いたい。苔が好きか嫌いか」と。好きなら原発は反対であるはずで、嫌いなら国歌は歌わせるな、と。

 ビナードさんの講演は目からうろこの連続だった。予定時間を大幅に超えての熱演で、終わるとすぐに自転車で、次の仕事へ向かって行かれた。